現在 絵描きと会社員のパラレルワーカーをしているYuko (@uu_yu) です。
先日、海外アーティスト、しかも現役で活躍中の絵本作家の講演会がある!という情報を聞き付け、イタリア文化会館まで行ってきました。
(※あえて絵本作家と呼ぶのには理由があるので、それは後半で)
なかなか海外のアーティストの具体的な活動や現地の業界事情について、生の声をきくチャンスなんてないので、これはとっても貴重な機会。
しかも漫画家のヤマザキマリさんがモデレーターとして業界話を深掘りしてくれるという。それが無料なのだから行くしかない!
で、参加してきた感想はというと・・・
彼らの作品を、なんと呼ぶのが正しいのか分からない。
というのも、職業名と実際にアーティストが手がけているものとのギャップがありすぎた。それも、国によって全く感覚が違うからだ。
講演会に行く前に、彼らがどんな作品を作っているのかな?と思ってチラっと調べたのだけど、わたしは「絵本」だと思った。
だから、彼らのことを「絵本作家」と思ったのだけど… 実際は違ったみたい。
では!講演会に参加してわかった、海外アーティスト・絵本作家(仮)の実態を記事にします。
- 絵本のような「コミック」というジャンルとは何か?
- 作品にかける制作時間
- 作品のエンターテイメント性について
- イタリア・フランスの業界事情 (後編)
- 出版業界、日本との違い (後編)
- イタリア・フランスのアーティストはどうやって生計を立てているのか?(後編)
【海外アーティストの講演会】イタリア人アーティストデュオの話
どんなアーティスト?
イタリア人のアーティストデュオ、ラウラ・イリョーリオとロベルト・リッチ。
彼らは2人で分業してオリジナルの物語を作り出し、それに合わせた絵を描いて一冊の本にして出版している。
今回はるばると日本へやって来たきっかけが、第10回日本国際漫画賞優秀賞の受賞。
現在はフランス市場で活躍している彼らの独創性の高い作品が評価され、日本語版がないにも関わらずの受賞!おめでとうございます!
どんな作品をつくっているの?
来日のきっかけにもなった受賞作品、「I’l cuore dell’ombra」
その作品がこれだ。
2人のオリジナルの物語に合わせて、丁寧に描かれた挿し絵。それが1冊の本になっている。
この1冊の本、本屋さんだったらどの棚に並べるだろうか?
作品のカテゴリーは「漫画」
なんと彼らの作品はコミック、日本語に訳すと「漫画」だそうだ!
だから今回 漫画家のヤマザキマリさんがモデレーターとして登壇しているのだ。そうか、腑に落ちた。
そもそも、漫画の定義ってなんだろう?
って考えると思い浮かぶのは___コマ割りがしてあって、吹き出しにセリフが書かれているもの___ではないかな?
たしかに彼らの作品は、細かくコマ割りされていて、その中にセリフと絵が描かれている。
とは言え、講演の内容を聞いていると、日本の「漫画」と安易にイコールにしてはいけない気がした。
彼らのいう「コミック」は全く別物だとわかったからだ。
コミック?絵本? 読者層から求められる作品タイプが見えてくる
「コミック」はどれくらいの制作時間?
2人が共同作業で作り上げる作品は、物語もオリジナルでイラストも彼ら自身が手がけている。
日本の漫画と違って、全ページフルカラーだ。1ページに見応えがあって贅沢だ。
そのため、1作品にはおよそ1年の時間をかけるそうだ。
出版のペースも1年に1冊。最近は半年に1冊、それよりも短くしようか?という動きもあるらしいけれど。
とにかく長期プロジェクトなわけで、1ページの仕上げには平気で7日間!とか、たくさんの時間を要する。
ちなみに、とっても素敵なこの作品の表紙には丸1ヶ月かかったという。
日本の「漫画」と比べると?
その一方で、日本の「漫画」はまるで違う!
漫画の連載は週刊もあるくらいだし、作品出版のペースがケタ違いのスピードだ。
彼らの作品制作時間を聞いて、「わたしの場合、7日間もあれば数10ページは描けると思う」とヤマザキマリさんは言っていた。
確かに日本の「漫画」は白黒だし、1コマの描き込みを比べると、ラウラとロベルトの「コミック」の方が濃密だと言える。
これはどちらがいい悪いではなく、そういう文化なのだ。
違いは、エンターテイメント性。作品がどういう読まれ方をするか?
ラウラとロベルトの「コミック」と日本の「漫画」には、見た目の違いだけではなく、もっと大きくて意味深いギャップがある。
印象的だったのが、スクリーンに映ったラウラたちの作品の1ページを見て、ヤマザキさんが言っていたこと。
「わたしだったらこのシーンを伝えるには、もっとカット数を増やしてページを使うだろうなぁ、と思った」
エンターテイメント性が違う、そうだ。
ページをめくるのが止まらないのが「漫画」
「漫画」の楽しさって、圧倒的にそのストーリー自体。
テンポよく臨場感のあるたくさんのカット割が、読んでる側にどんどん押し寄せるようにコマを重ねて、ページを重ねて、夢中になって先へと読み進めていく感じ。
1ページにかける時間は、結構短いと思う。
だから白黒で十分だし、もっと先が早く読みたいから週刊誌もたくさん存在する。
ページを広げてじっくり絵を観る「コミック」
一方、ラウラやロベルトが活躍するヨーロッパの「コミック」は、やはり絵本に近いと思う。
ヨイショと見開きの1ページをしっかり広げて、絵の世界に引きこまれる。絵が最大の魅力だ。
読者が1ページを開いている時間は、こちらの方が長いだろうと思う。
【海外アーティストの講演会】イタリア人アーティストデュオの話・前編まとめ
長くなってしまったので、一旦ここで講演会で学んだことをまとめましょ!
- イタリア人のアーティストデュオ、ラウラ・イリョーリオとロベルト・リッチは、コミックを制作するアーティスト
- 「コミック」という、日本でいう漫画と絵本の間のようなジャンルがある。けれど極めて絵本に近いイメージ
- 「コミック」はフルカラーで1年に1作品の出版がメジャー
- 「コミック」と「漫画」の違いは、作品のエンターテイメント性。「コミック」は1ページをゆっくり読み、絵は画集並みの魅力がある
今回「コミック」という新しいジャンルを理解することができて勉強になりました。
ロンドンにいたときに「Comic Novel」という言葉は聞いたことあっても、ちゃんと解説されたことがなくてよく分らなかった。「漫画」とも訳し難かったし。。
それぞれを「どう楽しむか?」という読者視点で解説されていたからこそ、とてもわかりやすかったんだろうなぁ。
やっぱり海外アーティスト x 日本人アーティストというコラボでの生の話、今回はとても貴重な機会で本当に参加してよかったわ〜。(会社早退した甲斐があった!)
それでは、この続きは後編の記事へ続く・・・
- イタリア・フランスの業界事情 (後編)
- 出版業界、日本との違い (後編)
- イタリア・フランスのアーティストはどうやって生計を立てているのか?(後編)
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