マイペースに 絵描きと会社員のパラレルワーカーをしているYuko (@uu_yu) です。
先日行ってきた、現役の海外アーティストの講演会は、普段聞けない情報満載でした!
情報を探そうと思っても、具体的な活動や、現地の業界事情について教えて、正直に語ってもらえるチャンスは少ないのが現実なので。。
と、いうことで、そんな貴重な話をまとめた記事の内容がこちら。
- 絵本のような「コミック」というジャンルとは何か?(前編)
- 作品にかける制作時間 (前編)
- 作品のエンターテイメント性について (前編)
- イタリア・フランスの業界事情
- 出版業界、日本との違い
- イタリア・フランスのアーティストはどうやって生計を立てているのか?
絵本作家、イラストレーター、漫画家…
あなたがこのあたりに当てはまるなら、日本との違いやリアルな海外事情はきっとおもしろいし、プラスになるはずなのでオススメです。
【前編を読んでない人へ】イタリア人アーティストデュオの話
そもそも、どんなアーティスト?
そもそも登壇してくれたアーティストデュオはどのジャンルのアーティストなのか?というと、「コミック」を制作しているアーティスト。
と思ったあなた、ぜひ前編を読んで欲しいです!
特に、作品ジャンルとエンターテイメント性については、国によって全然違うな〜!と。
なので知っておくと、この先の話が分かりやすいと思います。
【ここから後編】現役イタリア人アーティストが語る、シビアな実情
イタリアでは食べていけない?拠点をフランスへ移した訳
ラウラとロベルトは現在フランスで活躍している。
なぜ母国イタリアで仕事をしないのか?それには理由があるそうだ。
「わたしは仕事でコミックを制作しているのよ」
って、もしイタリアで周りの人に言ったとしたら…
と返される。アーティストデュオの1人、ラウラが苦笑いで語ってくれた。
コミックで食べていけるはずがない。という前提なので、生計を立ててる本当の仕事があるでしょ?っていう質問。シビアだ・・・
つまりそれだけイタリアでは食べていける職業ではないのだ。
コミック読者が圧倒的に少ない
イタリアではコミックはおろか、“若者が本を読まない問題”があるそうだ。
「とっても残念なことだよ。」と、ロベルトは正直に語ってくれた。
だからコミックそのものの需要も圧倒的に少ない。
本が売れなければ、アーティスト側へ正当な対価が支払われない。ゆえにコミックでは食べていけないのだ。
生きていくために、フランスへ
それに比べてフランスの方がコミックの需要も高く、アーティストへの対価もまずまずだそう。
こういった実情を聞くと、彼らがフランスへ活動の地を移したのは自然な流れなのが分かる。
この話で彼らを少し身近に感じたなぁ。(←勝手に)
ヨーロッパと日本を比べて分かった関係性。
新人育成の環境 x マーケットの成熟度
何度も言うけど、彼らが制作するのは「コミック」。
オリジナルのストーリーとフルカラーのイラスト。
そのどのイラストを取っても、額に入れて飾りたくなるくらい絵画的だ。
なので直訳だからといって日本の「漫画」とイコールにするのは、あまりにもタイプが違い過ぎると思うのだけどね。。
とはいえ、この講演会では「漫画」として語る企画なので、腑に落ちないながらも同じ「出版物」という意味で比べてみよう!
そこで見えてくるギャップが、コミック / 漫画に携わるアーティストにとってどんな影響を及ぼすのか?って視点でみるとおもしろいかなと。
ヨーロッパには コミックアーティストが育つ環境がない!
登壇していたラウラとロベルト、それに漫画家のヤマザキマリさんが感じていた問題は、本の需要の少なさの他にもう1つ。
ヨーロッパではコミックアーティストを育てる文化がなかなかないそうだ。
コミックアーティストが育つことは、コミック市場の活性化にもつながる。
分かりやすいのが、スポーツでよく聞く話に例えると・・・
競技人口が少ないマイナースポーツの選手が「もっとみなさんの関心が高まって、競技人口が増えて、このスポーツが盛り上がるようにがんばりたい!」と言っているアレだ。
そもそもの競技人口が少ないと、開催される大会も少ないし、世の中への露出も少なくなってしまうのだ。
新人が育つ環境、とは?
わかりやすいのは出版社が開催する「新人賞」だ。
日本では、漫画雑誌や出版各社が新人賞を開催している。
漫画雑誌やそれを扱う出版社の数は、世界でも日本はズバ抜けて多い!とヤマザキさんは言っていた。
一方でラウラは、「わたしたちが活動開始した当時は、イタリアでコミックを出版しているのはたった2社しかなかった」そうだ。
出版社が新人を求めるワケ
なぜ日本の出版社は新人の発掘が必要なのか?それは、マーケットが成熟しているから。
これはすべてが輪のようにつながって生まれるいいサイクルが、日本では長い間まわっているのだ。
さて。この瞬間、日本のマーケットに存在する漫画雑誌、そのページ総数はどれくらいになるだろう?毎週毎週、膨大な量の漫画が発信されているよね。
読者は常に新しくておもしろい作品を求めている。そこに載せるだけの作品数が必要なのだ。
出版社は読者を飽きさせないためにも、常に新しい才能を求めている。
成熟したマーケットだからこそ、新人もあこがれを抱く
今回登壇しているヤマザキマリさんは、日本とイタリアの両方で活動経験があるそうだ。
漫画のマーケットの成熟度は、日本が群を抜いているという。
需要があるから漫画が売れる。売れれば漫画家として成功することができるし、あこがれを抱いて漫画家を目指す新人もたくさん出てくる。
これがヨーロッパの市場に足りなくてとっても必要なこと。
ヨーロッパのコミックアーティストは、どうやって生計を立ててるの?
だって散々「ヨーロッパでコミックアーティストとして生きるのは難しい」って語ってたし、リアルな話が聞きたい!
コミックアーティスト一本ではなかった
ロベルトの収入源は、コミックアーティストとしての収入とコミック専門学校の講師としての収入らしい。
専門学校というのは、最近現地でも少しずつ増えてきた「コミックアーティストを目指す若者向けの学校」だそうだ。
ラウラの収入源は、コミックアーティストとしての収入と、イラストレーターとしての収入らしい。
ショック!! 日本の漫画家とは違う、コミックアーティストの収入源
コミックを出版するわけだから「原稿料」とか「印税」というのは、わたしたちも想像できる。
加えてもう1つ、コミックアーティストならではの収入源があるらしい。
それは原画の販売収入。
わたしは正直ショックだった。
絵を描く人なら分かるはず。
原画はオリジナルで世界にただ1つのもの。自分の分身のような、子どものような…
一体どれだけの時間をかけて育てたか…(涙)
本当は手放したくない!身を切る思いで手放す原画
ふー。ほっとした。どうやらラウラたちも原画を手放すのは身を切る思いだそうだ。
「原画はわたしの一部。売るのは本当につらい。でも今月の家賃が払えないってなったら、悲しいけど仕方ないじゃない?」
熱狂的なファンは「読者」というより「コレクター」
コミックアーティストには一部 熱狂的なファンがいて、彼らはコミックの「読者」というより絵画のコレクターに近いそうだ。
原画をオークションにかけると、破格で売れる場合もあるそうだ。
これは前編記事に書いた話とつながることで、「漫画とコミックの違いは、作品のエンターテイメント性だ!」ってことが「ファンの性質の違い」となっている。
その違いがまたクリアになった。
コミックは、ストーリーよりも絵のオリジナリティやクオリティを重視されている(期待されている)からこその、ファンの性質とマネタイズ方法だ。
一方、日本では大量の原画の保管に困っている現実
おもしろいことに、原画の扱いが日本の漫画業界ではちがっていた!
原稿は印刷データになってしまえばとにかくOKという扱いみたいで、毎週 大量に増えつづける原画の保管に困っている漫画家さんは多いそうだ。
漫画の資料館とかで一括して保存しようかという動きもあるらしい。
まとめ
はてさて、いかがだったでしょうかね?
自身の作品ジャンルと、マーケットでの需要の大きさ、それがアーティスト自身が食べていけるかどうかに深くつながっていること、が改めて分かりました。
- 需要が大きさが現在の供給者を生かし、未来の供給者を育てる
- ヨーロッパでの「コミック」市場はまだまだ小さく、1本で生計を立てるのは難しい
- コミックアーティストは原画を(やむを得ず)売って、収入にしている
- 「コミック」と「漫画」の違いは、作品のエンターテイメント性とファンの性質
- 「漫画」は豊かなストーリーとその展開を重視し、求められている
- 「コミック」は絵のオリジナリティやクオリティが重視され、期待されている
「漫画」というのは、わたしはジャンルは違うけれど本当に勉強になったなぁと。
日本と海外の業界事情・アーティストのいろんな事情を、こんな風に正直に比較した話を聞けたことが貴重でした。
特に今回は、日本とイタリアどちらも知っているヤマザキマリさんが、わたしたちに分かりやすく噛み砕いて説明&深堀りしてくださった! とってもとってもありがたい。
実はYukoも・・・!
実はわたしもThe Pod. Comic(←あ、コミック!)という企画にアーティストとして参加していて、今は企画自体のリリース待ち状態なのです。
To be announced…!!
海外のクライアントさんとのお仕事なので、その辺の話もまた別の機会に伝えられたらな〜と思います!
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