絵描きと会社員のパラレルワーカーをしているYuko (@uu_yu) です。
ハウツー系の記事はあまり書きませんが、今回参加したイベントがあまりに収穫が多く、絶対役に立つ情報だったのでイベントレポートとして共有します!
イベントのトピックは、「プロのイラストレーターとしてやっていく」とはどういうことなのか?
スピーカーはイラストレーターのコーディネイト会社、BUILDINGを経営されている森健司さん。
つまり、イラストレーターを選ぶ側にいる方です。
以下のイベント案内をPeatixで見つけて、すぐに申し込みをしました。
プロのイラストレーターになりたいけどどうやって仕事をはじめるの?みんな食べて行けているの?すでにイラストの仕事をしているけどキャリアアップしていきたい、BUILDINGが手掛けているようなオシャレな仕事を私もしたい!などなど。長年いろいろなテイストのイラストレーターとクライアントの間に入り仕事をしてきた森さんに「プロのイラストレーターとは?」をテーマにしてお話を伺いたいと思っています。
Peatixより引用
わたしにはとても刺さりました。耳の痛い話もあります。
では、イラストレーターのみなさん、一応 覚悟してください。
「プロのイラストレーターとしてやっていく」とはどういうことなのか?
イベントが開催されたのは都内、蔵前にあるTOKYO PiXEL。
スピーカーの森さんは現在のイラストレーターをコーディネートする会社、BUILDINGを経営されている。
イラストレーターとクライアントをつなぐエージェント、というのポジションの方だ。
以前には、広告代理店やPARCO、ギャラリーの運営へ携わるなど、広告主であるクライアント側も経験されている、いわば「クリエイティブを選ぶプロ」だ。
今回のイベントを企画されたのは クリエイターの大図まことさん。
大図さんは、クロスステッチデザイナー / ピクセルアートデザイナーであり、イラストレーターでもあり、イベント会場となったTOKYO PIXELのギャラリー店長でもあるそうだ。すごい・・・!
(実は、大図さんのことはアーティストとして台東デザイナーズビレッジに関するニュースで知っていた)
という感じで、おふたりのプロフィールを紹介された後。
イラストレーターと長く仕事をされてきた森さんが考える、「プロのイラストレーターとは?」について、具体的に切り込まれていく。
日本の美大では教えてくれないこと
残念ながら、プロのイラストレーターとしての仕事のルールを日本の美大では教えてくれない。
プロのイラストレーターとして本当に仕事ができるとはどういうことなのか?
仕事のルールを知っていること。それは「納品力」があることだという。
「納品力」とは、スケジュール管理ができるとか 納期が守れるとかいう単純な話ではない。
仕事全体を通しての「納品力」だそうだ。
「納品力」とは何か?
プロとしての仕事ができる力、それが「納品力」だ。
- オリエンテーションをした時の話の内容がちゃんと理解できるか?
- 業界用語が不便なく通じるか?
- 契約書の内容は理解できているか?
- 納期をきっちり守れるか?
- 納品データの形式は正しいか?
こういうことは会社に入っていれば上司や先輩が教えてくれるだろう。
でもフリーランスなら?
「仕事がやりにくい」「めんどくさい」と思われて、次にそのイラストレーターに仕事は来ない。そういうことだ。
仕事がやりやすいイラストレーターにはリピートの仕事が来る。
リピートが来ないなら、上記の何かしらに問題があったと思った方がいい。
※例外:次の案件がない小さい会社とか、商業施設の季節モノの広告だと同じ人を使えないという理由がある場合。
もしフリーランスなら、6つの役割をひとりでやるということ
生き残るイラストレーター、「勝ち残る」といってもいい。
特にフリーランスとして生き残るイラストレーターになりたいなら、まずはこれを理解しよう。
生き残る人はこの6つができる人
- 営業・・・新規クライアントの獲得・既存クライアントとのやり取り
- 経理・・・金勘定!一番シンプルだけど、、、
- 研究開発・・・新しいスタイル・技術の開発、効率化の研究
- 生産・・・みんな大好き、描く作業
- 広報
- 経営企画・・・反省および次にどんな仕事を取るか・どこに注力するかの戦略立て
6つのキーワードをイラストレーターの実務に置き換えるとこんな感じ。
会社だと「営業」とか「経理」「広報」をやってくれる部署があって、自分はイラストという「生産」に専念できるかもしれない。
でもフリーランスなら6つの役割 全部をひとりでやるということ。
6つの中でも大事な「研究開発」と「経営企画」
6つもある、大変だ。。。ならば、まずは大事な2つから見直そう!
森さんが特に重要だと伝えていたのが、「研究開発」と「経営企画」。
「研究開発」とは、新しいスタイル・技術の開発、効率化の研究をすること。
同じことだけでは、成長することはない。時代も変わる。技術も変わる。
自分のあたらしい作品への「研究開発」はイラストレーターにとっても分かりやすいし楽しい。
それだけでなく、効率化も「研究開発」だ。
生産するスピード、描くスピードが上がれば稼げる量が増える。売り上げが上がる。
それを助けるのは新しいツールかもしれない。
「経営企画」は会社のカナメ。一番 頭を使うところ。
- 業績をふりかえる
- 売り上げを増やすために次に何をするか?
- 時間やお金を何に投資するか?
という決定をすることだ。
見直すのはブランディングなのか、効率なのか。単価を上げるにはどうすればいいのか?
きっちり考えて、努力をする。生き残っている人はこういう努力をしている人なのだ。
耳が痛い。
苦手なことは外注してもいい
自分がやってきた作業・やるべきことを6つに分類できると、とっても分かりやすい。
すると、その6つの中で自分はなにが苦手かを理解する。それはもしかしたら、外注してもいいかもしれない。
営業が苦手なら森さんの経営するBUILDINGのようなエージェントに登録したり、経理や広報が苦手ならそういった外部のサービスを使ってみたり。
外注するとお金はかかる。間違いない。
それも含めて、未来のためにコストとしてどこに投資するか?それを自分の中の「経営企画」でしっかり考えて、行動しよう。
プロのイラストレーターとは?
この答えは人によって違うと思う。
イベント会場で参加者に問いかけられた質問への反応でもわかる。
この中で「イラストレーター」の人は手を挙げて。
「自分はプロのイラストレーターだ」という人は手を挙げて。
この2つの質問で、手を挙げている人数は変わった。
イラストでお金が発生する仕事をした
クライアントがいる
イラストだけで食べていける
「プロ」の定義は人それぞれだ。SNSでもこの手の話題は飽きるほどされてきた。
今回、イラストレーターと長く仕事をされてきた森さんが考える「プロのイラストレーター」の定義が今まで全く知らなかった考え方だったので(少なくともわたしは)、ぜひこれを見てほしい。
プロのイラストレーターはクラアントのポートフォリオが組める
ポートフォリオ。
イラストレーターがこの言葉を聞いて思い浮かぶのは、、、自分の作品を集めたファイル。クライアントに営業する時の作品ファイル。ではないだろうか。
確かにそう。それは「自分のポートフォリオ」だ。
では、森さんが言っている「クライアントのポートフォリオ」とは?
クライアントのポートフォリオ。
それは、自分がどんな仕事をするのか?どんなクライアントがいるのか?を列挙し、自分の仕事が選べるポートフォリオだ。
- 自分のブランドに合う仕事
- 収益になる仕事
- 好きな担当者がいる仕事
- やりたいジャンル
- 将来への投資
「自分のブランドに合う」は分かりやすい。
収益になる仕事は、自分の描きたいイラストではないかもしれない。
好きな担当者がいる仕事は、この人のためなら、長い付き合いだから、友人だから、など。例えお金にならなくても、やりたいという気持ちになる仕事。こういう気持ちって結構大事。
やりたいジャンル。ずっとこの映画関係の仕事がしたかった、ゲームが好きだから、など。
将来への投資。全くお金にならなくても、今後のためになるからやりたい仕事。
それはチャレンジすることで技術力アップになるかもしれないし、実績や宣伝につながるという理由かもしれない。
というように、仕事のタイプに応じたクライアントがいる。自分で仕事が選べる状態がプロのイラストレーターだ。これが森さんの考えだ。
まさに理想的である。世のイラストレーターでここまで出来ているイラストレーターはどれだけ存在しているだろうか。
天才以外はビジネスについて考えなければならない
成功している人は皆、ものすごく努力している。
当たり前に聞こえることも、当たり前にできないから差ができる。
プロのイラストレーターは、作品の力だけでは食べていけない。作品の力と同じく、あるいはそれ以上にビジネス努力が必要だ。
天才とそれ以外の境界線を示す、森さんのスライドを見てほしい。
上の赤い線の上。ここにいるのが天才だ。
好きなものだけ描いていて仕事がくる、お金になる。
それ以外の、天才以外の人は、必ずビジネス努力をしなければならない。
グラフの底辺付近の仕事の例は、絵のスキルがなくても めちゃくそ安いとか。
作品の力ではなく、「安さ」というビジネス戦略だけで勝ち取った仕事だ。
自分はどこにいるのか?足りないものを理解しよう
では、自分はどこに位置するのか?
ちゃんと考えて、知って、また考えて、戦略を立てなければならない。
プロのイラストレーターはふわっとしたことじゃない、ビジネスなのだ。
戦略立てることを苦手に思う人も 嫌がる人もいるけど、しっかりビジネスとして考えなければならい。
「ビジネス」であることを森さんは何度も強調していた。
それは、ビジネス意識が足りないイラストレーターが多い。と森さんが感じているからなのかもしれない。
まだまだ貴重な話はつづくので、後編記事へ。
どんな形でもストレスなく続けられること
さて。いかがでしたか?
ここまでシビアなお話をまとめてきましたが、森さんが伝えてくださった実情は本当にありがたいこと。
そして、あくまでも「プロのイラストレーターとしてやっていく」ならのお話。と補足されてました。
実は、森さんは美大出身ではなく「僕は絵は描けない」のだそう。大学は法学部だったそうです。
せっかく「絵が描ける」という才能があるのなら、ストレスなく続けられることが何より。
その言葉に、緊張していた気持ちは少しほぐれました。
あくまでも「プロのイラストレーターとしてやっていく」ためのお話で、作家なら話は別だし、別の稼ぎがあって兼業の人もいれば、絵は趣味でやりたい人もいる。
「イラストレーター」は どんな形だっていいし、何が正しいとかの正解もない。
わたしもこのブログで何度もお伝えしてますが、自分にとって心地よいスタイルを見つけられることが一番幸せだと思っています。
今回のお話で、わたしは特に6つの役割、自分の中の6つのタスクについて考え直すべきだと思いました。
ここまで読んでくれた人にとっても、何かプラスになることがあればうれしいです。
貴重な森さんの講演内容は書ききれていないので、続編へつづきます!
それでは、今日は一旦ここまで。
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